最近、膀胱からおしっこの出口にかけての「尿道」が詰まってしまい、緊急の外科手術を行ったオス猫さんがいました。今回、飲水摂取の工夫や尿トラブル用処方食の使用では、改善が厳しい子に対しての外科手術の紹介をしたいと思います。
なお、当院のどうぶつ病院通信では、猫さんの尿トラブルに関して、「飲水摂取の重要性」と「下部尿路疾患」について過去に特集しました。過去の記事は以下をダウンロードしてご覧下さい。
今回手術を行ったオス猫さんですが、まだ若い子で、今までおしっこのトラブルは一切なかった子でした。「トイレによく行くが、全くおしっこが出てこない」ということで当院を受診されました。少し前からペニスの先を気にして舐めるそぶりがあったようです。
受診時は、尿道の出口から数cmの所が詰まり、膀胱からおしっこが出せなくなっている、「尿道閉塞」の状態でした。緊急処置を行い、いったんは尿道の詰まりを取り除くことができました。尿からはストラバイト結晶が多数見つかりましたが、レントゲンや超音波エコー検査では尿中の結石は見当たりません。
しかしその後も・・・
1)短期間に何度も尿道の同じ場所で詰まってしまい、尿が出せなくなることを繰り返した。
2)ご自宅にて、処方食への変更や今まで以上の飲水摂取への取り組みがなかなかうまくいかない。
3)尿道確保のためのチューブをつけたまま、長期間入院で点滴や処方食を頑張るのは、猫さんの性格からしてもなかなか受け入れがたい。
4)明らかな尿道内の結石であれば、膀胱内へ押し戻すことで実施可能な、(より手術後の合併症のリスクの低い)膀胱切開手術の適用状況ではない。
以上のことから、会陰尿道造瘻(えいんにょうどうぞうろう)手術を早期に実施しました。
ペニスを包皮から剥がし、お尻の下で骨盤とくっついている靭帯や筋肉からも剥がしてぶらぶらにさせてから、尿道が広くなる部分までペニスを切断し、切断したペニスの尿道粘膜と、剥がした包皮の粘膜を縫い合わせる手術です。
手術をきちんと行わないと、手術後の合併症は命にとっても重大なものになりやすいです。またその場合、リカバリーするための手術は、さらに大きな再手術負担を猫さんに強いることになってしまいますので、責任重大です。
この子は手術後の入院を経て、無事退院しました。おしっこも問題無く出せ、現在まで合併症も無く、元気に過ごしています。
写真は手術後、抜糸をした時の傷の様子です。
もともとペニスがあった場所からおしっこができるため、一見普通のオス猫さんと外見は同じです。
この手術後は、通常の雄猫さんよりも、菌感染による膀胱炎のリスクが高くなる可能性はあり、定期的な診察がしばらく必要となります。
また、飲水摂取の工夫は引き続き重要となりますし、可能な限り尿トラブル用の処方食の継続的な使用をお勧めしています。
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